ポスト・コロナ時代においては集合よりも分散が求められ、分散においてはそれぞれの自律が求められることになる。これはグループ&グローバル経営そのものにおいても、個別の人材・タレントマネジメントにおいても同様である。
自律・分散型の経営・人材マネジメントでは時間軸別に以下3つの視点から対応していくことが求められる。
自律・分散型の経営・人材マネジメント
1.短期:BCP(事業継続計画)としての働き方のダイバーシティ促進
時差出勤・リモートワークによる在宅勤務等、多様な働き方は従来の「働きやすさ」という範疇を超え「ダメージコントロール・事業継続」という観点から全社員を対象としたものとなり、かつ加速する。ダイバーシティー推進をBCPを実現する手段としてとらえ直す早急の対応必要性が出てくる。
2.中期:守りと攻めを同時に実現する組織変革
各種構造改革に着手をする必要がでてくると思われるが、単なる経費削減にとどまらない、新たな環境における競争力創造の観点から対応していく必要がある。このプロセスの中で中核的な人材(コア人材)とその他(ノンコア人材)の一層の選別が進む。
3.長期:次世代経営者育成の機会
経営者育成において求められる要素は多々あるが、共通するものとしては修羅場体験であろう。その意味で、将来から現在を振り返った時、今はまさに次世代経営者の揺籃期といえる。グローバルかつ急激な環境変化を認識し、他者を巻き込みながら自らが主体的に動く経営人材の輩出機会という状況にあることを現在の経営者および人事は意識をし、人材の可視化・任用を行うべきである。
ユニバーサルデザインデザイン的な観点での制度設計
自律・分散型の経営・人材マネジメントにおける制度設計ではユニバーサルデザインデザイン的な発想が求められることになる。ユニバーサルデザインとは「すべての人のためのデザイン」を意味し、文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずにできるだけ多くの人にわかりやすく、利用できることを目指した建築・製品・情報などのデザインであり、1980年代にノースカロライナ州立大学(米)で建築や物のデザインを研究していたロナルド・メイス教授によって提唱されたものである。
(ユニバーサルデザインの7条件)
1.どんな人でも公平に使えること。
2.使う上での柔軟性があること。
3.使い方が簡単で自明であること。
4.必要な情報がすぐに分かること。
5.うっかりミスを許容できること。
6.身体への過度な負担を必要としないこと。
7.アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。
組織・人事制度の設計においては、単純・明快・公平・柔軟という観点に置き換えてもよいだろう。そして、これら制度においては各担い手の判断余地が大きくなるがゆえに、「自ら考え、動ける自律的な人材」が今まで以上重要となってくる(その必要性については今年オンラインで新入社員研修を行っている人事の皆様がすでに痛感されているのではないだろうか)。つまりある程度の成熟が前提となってくるともいえ、入社年次問わず社内ではこの差が顕在化してくることになる。
※4月28日にリリースした【緊急レポート 第2弾】ポスト・コロナ時代の人事戦略~これから起こる事とキーワード~